Topics「風土が育てる搾ったままの酒」

朝日新聞デジタル「&w(アンド・ダブリュー)」より
https://www.asahi.com/and_w/articles/SDI2018103031751.html?iref=andw_pc_top_ar_photo019

 ストライクゾーンど真ん中のお酒に最近出合い、すっかり日本酒党になった。そのお酒は「純米・無濾過(ろか)・生・原酒」。米と水だけを原料とし、雑味やうまみまで除去してしまう「濾過」をしない。自然の発酵を止める「火入れ」をしないから、「生」。アルコール度数の調整や、味のバランスをとるために加水もしないので「原酒」。「無濾過生原酒」とは、つまり「搾ったままのお酒」のことだ。
 このおいしさを教えてくれたのは、「日本酒応援団」。日本酒を造っているれっきとした会社なのだが、もともとは、日本酒好きが集まり、自分たちの好きなお酒(純米・無濾過生原酒)を造る小さな蔵を応援しようと集まったグループだった。それがそのまま醸造会社になった。
 そのスタイルはとてもユニーク。蔵をもたず、各地の歴史ある酒蔵とコラボレート。現地で米作りをし、その米で酒を造る。
 原料の酒米について、日本酒の蔵は従来、どこで育ったかより、品種を重要視してきた。一方、日本酒応援団は、提携先の蔵の地元で育てた米を使い、ワインのように「テロワール(気候風土)」を大事にする。極力手作業で少量生産することで、味わいの深さ、香りの高さを追求している。
 コラボしている酒蔵は6県6蔵。石川、大分、岡山、埼玉、新潟、島根。どこも技術力に優れ、酒造りに真摯(しんし)な当主がいる。同じ造り方をしても、味はすべて異なる。私はその土地の光や風などの空気感を思い浮かべたり、蔵の様子を想像したり。燗酒(かんざけ)の美味(おい)しい季節が来た。(フードジャーナリスト・北村美香)